介護離職のトリプルリスクを知る
「仕事を辞めて介護に専念しよう」——この判断をする前に、必ず知っておくべきことがあります。介護離職には収入・再就職・精神面の3つのリスクが同時にのしかかってくるのです。
- 収入リスク:毎月かかる介護サービス費・医療費・生活費が賄えなくなる。外部サービスを使えなくなり、逆に自分の負担が増える
- 再就職リスク:50代以降の正規雇用への復帰は厳しい。介護期間が長引くほど職歴の空白が広がる
- 精神リスク:社会的なつながりが薄れ孤立しやすくなる。要介護者が亡くなった後に生活再建が困難になる
厚生労働省の調査では、介護離職者の多くが「もっと早く制度や相談窓口を知っていれば離職しなかった」と回答しています。介護離職は「最後の手段」——使える制度・サービスをフル活用してから判断することが重要です。
母が倒れてすぐ「仕事を辞めるしかない」と思って退職届を書きかけました。そのとき人事の担当者に「介護休業という制度があります」と声をかけてもらって。3ヶ月の介護休業でケアマネさんとデイサービスの体制を整えて、職場復帰できました。給付金が67%出ることも知りませんでした。知らなかっただけで、使える制度はたくさんあったんです。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
介護休業93日の正しい使い方
育児・介護休業法により、介護が必要になったとき会社に申請できる制度があります。多くの人が知らないまま辞めてしまうので、必ず確認しましょう。
介護休業(最大93日・3回まで分割可能)
要介護状態にある家族1人につき、通算93日まで休業できる制度です。「93日で介護を完結させる」のではなく、「介護体制を整えるための準備期間」として活用するのがポイントです。
- 対象家族:配偶者・父母・子・祖父母・兄弟姉妹・孫など
- 給付金:雇用保険から休業前賃金の67%が支給(93日上限)
- 分割取得:3回まで分割して取得可能。「急性期対応30日+施設選び30日+残り33日は後で」という使い方もできる
介護休業給付金の手取り計算例
| 休業前月給 | 給付金(67%) | 手続き先 |
|---|---|---|
| 20万円 | 約13万4千円/月 | ハローワーク(会社経由で申請) |
| 30万円 | 約20万1千円/月 | |
| 40万円 | 約26万8千円/月 |
介護休暇(年5日・時間単位で取得可)
1日・半日・時間単位で取得できる休暇です(対象家族2人以上は年10日)。通院付き添い・ケアマネとの打ち合わせ・役所での手続きなど、短時間の対応に使えます。無給の場合が多いですが、会社によっては有給扱いもあります。
パートなので介護休業の給付金はもらえないと思っていたら、雇用保険に入っていれば対象になると教えてもらって。年5日の介護休暇を時間単位で使って、月1〜2回の通院付き添いをこなしています。「介護しているんです」と職場に言ったら意外と理解してもらえて、シフトも調整してもらいました。言わないと損することが多いと思いました。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
2025年改正法で強化された権利
2025年4月の育児・介護休業法改正で、働きながら介護する人の権利が大幅に強化されました。
| 制度 | 内容 | 2025年改正のポイント |
|---|---|---|
| 残業免除 | 介護終了まで残業を免除申請できる | 定時退社の権利を強化 |
| 時短・テレワーク | 3年間・2回以上の利用が会社の義務 | テレワーク・フレックスの提供義務を新設 |
| 個別周知義務 | 会社が介護者に制度を個別説明する義務 | 「知らなかった」という状況を防ぐ |
| 不利益取り扱い禁止 | 制度使用を理由とした降格・解雇の禁止 | より強い保護規定に |
職場への伝え方と具体的な文例
「介護のことを会社に言いにくい」という気持ちはよくわかります。ただ、黙って抱え込んで急な欠勤が増えた方が、職場の信頼を失います。早めに一言伝えることで、配慮が得やすくなります。
伝える内容は最小限でOK
「家族の介護が必要な状況になりました。しばらく急な対応が必要になることがあります」という一文で制度を使う権利は発生します。詳細な病名・介護内容を話す義務はありません。
- 「家族が介護が必要な状態になりました。仕事は続けたいと考えており、可能な範囲で配慮をお願いできれば幸いです」
- 「月に1〜2回、通院付き添いで午後半休または早退が必要になる場合があります。業務への影響を最小限にするよう努めます」
- 「介護休業制度の詳細を人事に確認したいのですが、相談する機会を設けていただけますか」
制度を使う順番——やること3ステップ
「何から手をつければいいかわからない」という声をよく聞きます。まずこの3ステップを順番に進めることで、仕事を続けながら介護体制を整えられます。
要介護認定申請(市区町村窓口)
まず市区町村の介護保険担当窓口で要介護認定を申請してください。申請から結果まで約30日かかりますが、暫定ケアプランで先にサービスを使い始めることができます。
ケアマネジャーと契約(仕事の条件を伝える)
ケアマネジャーに「仕事を続けたい・平日の昼間は不在」という条件を最初に伝えてください。デイサービス・訪問介護・ショートステイを組み合わせた「仕事優先のケアプラン」を組んでもらえます。
職場の人事に制度確認・申請
「介護休業制度について教えてほしい」と人事に伝え、介護休業・休暇・時短の選択肢を把握します。最初の体制構築期間に介護休業を使い、サービスが安定したら通常業務に戻るのが理想的な流れです。
介護サービスで仕事中の時間を守る
仕事を続けるためには、「介護はプロのサービスに任せる」という割り切りが不可欠です。外部サービスの組み合わせで、仕事中の時間を確保できます。
仕事優先の介護体制を作る組み合わせ例
- 平日昼間の空白を埋める:デイサービス(週3〜5日)で日中の見守り・食事・入浴をカバー
- 朝夕の隙間を埋める:訪問介護(朝30分・夕30分)で服薬確認・食事補助
- 出張・残業・繁忙期:ショートステイ(月数日確保)で突発的な不在に対応
- 安否確認・緊急時:見守りカメラ+定期巡回型サービスで仕事中の不安を軽減
自営業なので介護休業は使えないと思っていたのですが、ケアマネさんに「在宅サービスをフル活用すれば仕事時間を守れます」と言ってもらえて。平日はデイサービスに週4日行ってもらい、訪問介護で朝晩だけサポート。私は仕事の納期に集中できるようになりました。認知症対応は本当に疲弊するので、プロに任せることへの罪悪感は捨てることにしました。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
上司に介護のことを話すのがずっと怖くて、一人で抱え込んでいました。限界になって話したら、思ったより理解してくれて。介護休業93日を3回に分けて使いながら、デイサービスとヘルパーの体制を整えることができました。仕事を辞めなくていいとわかったとき、本当にほっとしました。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
父が遠方に一人で暮らしていて、月に一度様子を見に行くのが精一杯でした。テレワーク制度を使って週3日在宅勤務にしたことで、緊急時にすぐ動ける余裕が生まれました。介護と仕事、どちらかを犠牲にしなくていいんだと気づいたのは制度を使い始めてからです。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
義母の介護が始まってからパートを減らさざるを得なくて収入が半分以下になりました。でもケアマネに相談して訪問介護とデイサービスを組み合わせたら、週3日はフルで働けるようになりました。制度をもっと早く知っていればよかったと思います。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
よくある質問
まとめ
- 介護離職には収入・再就職・精神面のトリプルリスクがある——「最後の手段」と心得る
- 介護休業は最大93日・3分割可能。「体制を整える準備期間」として使う
- 給付金は休業前賃金の67%(最大93日分)がハローワーク経由で支給される
- 2025年4月改正でテレワーク提供・個別周知が会社の義務になった
- 制度利用の順番:要介護認定申請→ケアマネ契約→職場への制度確認を並行して進める
- デイサービス・訪問介護・ショートステイの組み合わせで「仕事中の時間」を守る
介護のプロに相談する(無料)
- 厚生労働省「仕事と介護の両立(介護離職防止対策)」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「育児・介護休業法について(令和7年4月1日施行版)」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 総務省「令和4年就業構造基本調査」→ 介護離職者数・就業介護者数
最終更新:2026年6月