介護と仕事の両立支援制度の全体像

育児・介護休業法では、介護をしながら働き続けられるよう、複数の制度が定められています。これらの制度は会社員だけでなく、一定要件を満たすパートタイム労働者にも適用されます。まず全体像を把握しましょう。

制度名 内容 上限・期間 給付金
介護休業 まとまった期間、仕事を休める 通算93日(3回まで分割可) 賃金の67%
介護休暇 1日・半日単位で休める 年5日(2人以上なら10日) 会社による
所定外労働の免除 残業を完全免除 介護終了まで(1年ごと更新) なし
時間外労働の制限 残業を月24時間・年150時間以内に制限 介護終了まで なし
深夜業の制限 深夜(22時〜翌5時)の勤務を免除 申請ごとに6ヶ月間 なし
勤務時間短縮等の措置 時短・フレックス・テレワークなど 利用開始から3年間・2回以上 なし
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松本浩二さん(仮名)・47歳・製造業 父(75歳・要介護1)の介護で介護休業を取得

父が骨折で入院したとき、「介護休業なんて自分には使えないだろう」と思っていました。会社に申し出たら総務の人も制度をよく知らなくて、一緒に厚労省のページを調べながら手続きしました。93日間の介護休業を2回に分けて取得して、介護休業給付金も受け取れました。仕事を辞めずに父の介護ができた。制度を知っているか知らないかで、選択肢が全然違います。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

介護休業(最大93日間)

介護休業の基本情報
対象者 要介護状態にある家族を介護する雇用者(雇用期間が1年以上・終了まで1年超が見込まれること) 対象家族 配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫 上限日数 同一の対象家族につき通算93日(3回まで分割取得可能) 給付金 休業前賃金の67%を雇用保険から支給(介護休業給付金) 申請先 勤務先への書面申請(開始2週間前までが原則)

93日は「介護するための期間」ではなく、「介護の体制を整えるための期間」と位置付けられています。ケアマネジャーの選定・サービスの調整・施設の検討など、介護の仕組みを整えるために活用しましょう。

3回に分けて取得するメリットと活用例
  • 1回目(20日):要介護認定の申請・主治医の意見書取得・ケアマネ選定
  • 2回目(30日):施設見学・サービス担当者会議への参加・居宅サービス開始
  • 3回目(43日):施設入所・転院の最終調整・在宅介護の安定化
  • 必要な時期に集中して使うことで、仕事への影響を最小化できる

介護休暇(年5日)

介護休暇の基本情報
対象者 介護休業と同じ(日雇い労働者を除く) 日数 年5日。対象家族が2人以上なら年10日 取得単位 1日単位・半日単位(会社が認める場合は時間単位も可) 給付金 法律上は有給でなくてもよい(会社によって有給・無給が異なる) 使用例 通院の付き添い・役所への手続き・ケアマネとの面談・訪問診療の同席

介護休暇は「年間のスポット使い」に特化した制度です。介護休業とうまく組み合わせることで、介護休業は体制整備に集中させ、日常のスポット対応は介護休暇で乗り切るという使い方が理想的です。

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田中優子さん(仮名)・44歳・事務職(パートタイム) 母(71歳・要介護2)の介護で介護休暇と時短勤務を活用

パートだから介護休暇は使えないと思っていました。でも勤続3年で雇用保険にも入っていたので、調べたら私にも権利がありました。月に1〜2回の通院付き添いのたびに半日単位で介護休暇を使っています。時短勤務も申請して、週4日・1日5時間に変えてもらいました。制度は「正社員だけのもの」ではないと実感しています。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

その他の両立支援制度(残業免除・時短・テレワーク)

所定外労働の免除(残業なし)

申請すれば、介護が必要な状態が続く間、残業を完全に免除してもらえます。定時退社を安定的に実現したい方には特に強力な制度です。1年単位で更新申請します。

勤務時間短縮等の措置

利用開始から3年間・2回以上の利用が会社に義務付けられています。2025年4月の法改正でテレワーク(在宅勤務)が法定の選択肢として明記されました。

⚠️ 会社が「うちにはそんな制度はない」と言っても、法律で定められている以上、会社は対応する義務があります。まず人事部またはハローワークに問い合わせましょう。不当拒否には都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」が対応します。

介護休業給付金の受け取り方と計算例

介護休業中は、雇用保険から「介護休業給付金」として休業前の賃金の67%相当が支給されます。社会保険料(健康保険・厚生年金)は休業中も引き続き支払いが必要です。

受け取るための条件

給付金の計算例

休業前の月収 給付金(月額) 備考
20万円 約13万4,000円 20万×67%
30万円 約20万1,000円 30万×67%
40万円 約26万8,000円 40万×67%
50万円 約28万4,250円 支給上限あり(賃金日額に上限)
💡 給付金の上限は賃金日額の上限(2025年度:約15,250円)によって決まります。月収50万円以上の方は上限額が適用されるため、実際の給付率は67%を下回ります。

申請の流れ

  1. 介護休業開始2週間前までに会社に書面で申し出る
  2. 会社が「介護休業給付金支給申請書」をハローワークに提出する
  3. 休業終了後2ヶ月以内に申請が完了すると給付金が振り込まれる
申請は会社経由がほとんど——事前に人事部に確認を
  • 給付金の申請手続きは「会社(事業主)→ハローワーク」で行うのが基本
  • 会社が申請を怠った場合は、労働者本人がハローワークに直接申請できる
  • 申請書類・必要書類は厚生労働省ホームページからダウンロード可能

上司への伝え方・申請スクリプト

制度があっても「言い出しにくい」という声は非常に多いです。切り出し方のポイントは「仕事を辞めず続けたいから制度を使いたい」という意思を最初に伝えること。以下のスクリプトを参考にしてください。

上司への切り出し方(実際に使えるセリフ例)
「少しお時間をいただけますか。家族の介護が必要になりまして、仕事を続けながら対応したいと思っています。介護休業の制度を使わせていただけますか?」
「いきなりで申し訳ないのですが、先に人事部にも相談して、制度上は問題ないことを確認しています。担当している〇〇の業務については、△△さんに引き継ぐ形で対応できると思っています。」
「最終的に介護が落ち着いたら通常業務に戻りたいと思っています。会社に長くいたいからこそ、この制度を活用させてほしいとお願いに来ました。」
「もし何かお気になる点があれば、詳しくご説明します。また人事部を交えて話し合いの場を設けてもらえると助かります。」
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鈴木達也さん(仮名)・52歳・管理職(IT企業) 部下が介護休業を申請してきた立場として

部下から「親の介護で休業したい」と言われたとき、正直どう対応したらいいか迷いました。でも本人が「仕事を辞めずに続けたい」と真剣に話してくれて、業務引き継ぎ案まで持ってきてくれた。上司としては応じやすかった。2025年4月の法改正で、うちの会社も従業員へ制度を個別に周知する義務が生じました。制度を使ってもらうことが、離職防止につながると実感しています。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

2025年4月法改正のポイント

2025年4月1日施行の育児・介護休業法改正では、介護と仕事の両立支援が大幅に強化されました。

改正内容 詳細 対象
個別周知・意向確認の義務化 要介護状態の家族を持つ従業員に、会社が両立支援制度を個別に説明・意向確認 全事業主
テレワークの法定措置化 介護のための勤務時間短縮等の選択肢にテレワークが追加・義務化 全事業主
介護休暇の周知強化 介護休暇の取得申請に対して会社が拒否できる例外を明確化 全事業主
💡 「会社から制度の説明がなかった」という場合も、2025年4月以降は会社に説明義務があります。人事部に「個別の周知・意向確認はしてもらえますか?」と一言伝えるだけで、制度の説明を受ける権利があります。

まとめ

まとめ

  1. 介護休業(93日・3分割可)・介護休暇(年5〜10日)・残業免除など6種類の両立支援制度がある
  2. 介護休業は「介護の体制を整える期間」——3回に分けて計画的に使うのが正解
  3. 月収30万円なら介護休業給付金で約20万円受給できる。事前に雇用保険の加入期間を確認する
  4. パート・アルバイトも1年以上勤続+雇用保険加入で取得・受給の可能性あり
  5. 2025年4月改正でテレワーク権利が強化。会社への個別周知・意向確認も義務化
  6. 「言い出しにくい」時は先に人事部へ。引き継ぎ案を持参すると職場の理解を得やすい
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参考・出典
  • 厚生労働省「育児・介護休業法について(両立支援)」→ https://www.mhlw.go.jp/
  • 厚生労働省「介護休業給付金について」→ https://www.mhlw.go.jp/
  • 厚生労働省「令和6年改正育児・介護休業法について(令和7年4月1日施行分)」→ https://www.mhlw.go.jp/
  • e-Gov 法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」→ https://laws.e-gov.go.jp/
※ 本記事は2025年4月施行の育児・介護休業法改正を反映しています。法改正により内容が変わる場合があります。詳細はハローワーク・都道府県労働局にご確認ください。