突然の介護開始でパニックになるのは当然

「昨日まで元気だったのに」「こんなに早く来るとは思っていなかった」。親が脳梗塞や脳出血、骨折などで突然入院し、そのまま介護が始まる――日本では毎年こうした形で介護が始まるケースが多くあります。

突然の出来事に動揺するのは当たり前です。ただ、パニックのまま動き回ると判断を誤り、後から後悔する選択をしてしまいがちです。「今すぐすべてを決めなくてよい」ことをまず知っておいてください。この記事では、入院直後・入院中・退院前の3つのフェーズに分けて、やるべきことを整理します。

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田中恵子さん(仮名)・43歳・会社員 夫・子ども2人 / 実家まで電車で1時間

仕事中に母から電話があって「お父さんが倒れた」って。頭が真っ白になりました。会社を早退して病院に向かいながら、「仕事はどうする」「子どものお迎えは」「介護って何をすればいいの」って頭の中がぐるぐるして。病院に着いても、先生の説明が半分も頭に入ってこなかった。あの日、自分が何をしていたかほとんど覚えていません。後から聞いたら、入院した日のうちにやっておけることがいくつもあったと知って、後悔しました。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

⚠️ 「今すぐ施設を決めなければ」と焦る必要はありません。退院後の生活を整えるまでには一定の時間があります。ただし「介護認定の申請」だけは入院中に始めておくと、退院後の動きがスムーズになります。

フェーズ1|入院直後の48時間でやること

🚨 入院直後〜48時間以内

入院直後は情報収集が最優先です。この時点では「退院後をどうするか」を決める必要はありません。まず状況を正確に把握することに集中してください。

🚨 入院直後にやること(48時間チェックリスト)
主治医から「病状・今後の見通し」を確認する 「いつ頃退院できそうか」「退院後はどんな介助が必要か」を具体的に聞く。急いで決める必要はないと告げられても、見通しを把握しておく。
病院のソーシャルワーカー(MSW)に声をかける 「退院後のことで相談したい」と看護師に伝えればつないでもらえる。MSWは施設紹介・在宅サービスの手配・介護認定の案内まで幅広く支援してくれる頼もしい存在。
兄弟・家族に連絡して状況を共有する 連絡が遅れると後から「なぜ教えてくれなかった」という摩擦が生まれやすい。この時点では「こんな状況になった」という事実の共有だけでOK。
介護保険証・かかりつけ医の情報を手元に集める 介護保険被保険者証(65歳以上に交付)と、かかりつけ医の名前・連絡先を把握しておく。認定申請や主治医意見書の手配で必要になる。
自分の仕事・子育てを当面どう回すかを確認する 介護休暇は年5日取得できる(有給とは別)。まず1〜2日の余裕を確保し、上司に事情を伝えておくと動きやすくなる。

フェーズ2|入院中にやること(1〜2週間)

📋 入院中〜退院2週間前

入院期間中は「退院後の生活を準備する期間」です。特に介護認定の申請は時間がかかるため、この期間中に動き始めることが重要です。

① 介護保険の要介護認定を申請する

介護保険サービスを使うには要介護認定が必要です。申請から結果が出るまで原則30日かかるため、入院中に申請を始めることで退院後すぐにサービスを利用できます。

1
親が住む市区町村の介護保険窓口に電話する
「親が入院中で、代理で介護認定を申請したい」と伝えるとスムーズ。郵送や窓口持参でも可。地域包括支援センターでも申請の手伝いをしてくれる。
2
申請書を提出する(家族の代理申請も可)
必要書類:介護保険被保険者証・本人の印鑑・申請者(家族)の身分証。かかりつけ医の情報も記入が必要。
3
認定調査員が病院・自宅に来て状態を確認する
入院中の場合は病院に調査員が来てくれることも多い。「普段の状態」を正確に伝えることが大切(病院では頑張ってしまう場合がある)。
4
主治医の意見書が作成され、審査会で要介護度が決定
要支援1〜2・要介護1〜5に分類される。認定が出る前でも「暫定ケアプラン」でサービスを先行利用できる制度がある。
📋 「暫定ケアプラン」を活用しよう
認定結果が出る前でも、ケアマネジャーに依頼して「暫定ケアプラン」を作ることで、訪問介護・デイサービスなどを先行して使い始められます。退院日が認定結果より早くなりそうな場合は、MSWかケアマネに相談してください。

② 家族で役割・費用分担を話し合う

入院中の落ち着いた状況で、兄弟や家族と話し合いを持ちましょう。退院後に慌てて決めると感情的になりやすく、後になって「言った・言わない」のトラブルになりがちです。

家族で話し合っておきたいこと
  • 主な介護の担当者は誰にするか(一人に集中させない)
  • 費用は誰がどのくらい負担するか(年金・貯蓄・兄弟分担)
  • 退院後は在宅介護か施設入居か、大まかな方向性
  • 遠方に住む兄弟の関わり方(週末に来る・費用を出すなど)
  • 緊急時の連絡順番と対応担当
👨
松本浩一さん(仮名)・49歳・製造業 父・78歳が脳梗塞で入院、兄弟3人で分担した経験

父が倒れた翌日、兄・弟・私の3人で病院に集まって話し合いました。「俺が費用を多く出す」「俺は週末に通う」「通院付き添いは私」って、その場で大まかに決めた。後から考えると、あの早い段階での話し合いが本当に大事でした。介護が始まってからだと、それぞれが疲弊していて感情的になりやすいし、役割が曖昧なまま進んでしまう。しんどくなってから話し合うのは遅いんです。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

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フェーズ3|退院前にやること

🏠 退院2週間前〜退院当日

退院日が決まったら、具体的な「退院後の生活」を組み立てる時期です。MSWやケアマネと連携しながら、退院当日から安心して生活できる体制を準備します。

1
MSWと「退院後の生活プラン」を相談する
在宅に戻るか施設に入るかを確認し、必要なサービスをMSWと一緒に検討する。施設への入所を検討する場合は、MSWが施設紹介も行ってくれる。
2
ケアマネジャーと契約してケアプランを作る
要介護1以上なら居宅介護支援事業所のケアマネと契約。どのサービスをどう組み合わせるかを一緒に決める。費用は介護保険が全額負担で自己負担なし。
3
自宅の環境を整備する(在宅の場合)
手すりの設置・段差の解消・介護ベッドのレンタルなどを準備。住宅改修費は介護保険で上限20万円まで補助される(要介護1以上)。ケアマネに相談すれば手配を手伝ってもらえる。
4
訪問介護・デイサービスなどを退院前に手配する
退院当日からサービスが使えるよう、ケアマネが各事業所に連絡・調整してくれる。退院後に「手が回らない」「一人では限界」という状態を防ぐために、最初からサービスを入れておくことが重要。
👩
木村さおりさん(仮名)・54歳・パート 母・81歳の骨折入院から在宅介護に移行した経験

入院中に病院のソーシャルワーカーさんに声をかけてもらったのが、本当に助かりました。「介護認定の申請、入院中にできますよ」「退院後のサービス、一緒に探しましょうか」って言ってくれて。自分では何が必要かもわからなかったのに、退院前には訪問介護とデイサービスが決まっていました。最初に頼るべきはMSWです。知らなかったら「退院後に何もない状態」で帰宅することになっていたと思います。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

相談先別「誰に何を相談する?」

介護が始まると、さまざまな相談先が出てきます。どこに何を聞けばよいかを事前に整理しておくと、いざというときに迷いません。

相談先 いつ使う できること 費用
病院のMSW
(医療ソーシャルワーカー)
入院中〜退院前 退院後のプラン相談・施設紹介・在宅サービスの調整・認定申請の案内 無料
地域包括支援センター 退院前後・介護全般 介護全般の総合相談・認定申請の代行・ケアマネの紹介・介護予防 無料
ケアマネジャー 認定後〜継続的に ケアプランの作成・サービス事業所の調整・定期モニタリング・各種手続き 無料(介護保険適用)
市区町村窓口 認定申請時 要介護認定の申請・介護保険証の発行・負担軽減制度の案内 無料
💡 迷ったら「地域包括支援センター」に電話してください。
「まだ認定を受けていない」「何から始めればいいかわからない」という状態でも大丈夫です。地域包括支援センターはどんな相談も受け付けており、必要な窓口につないでくれます。市区町村のホームページや電話帳で「地域包括支援センター」と調べると見つかります。

仕事・育児との両立をどうするか

突然の介護開始で最も頭を悩ませるのが、仕事や子育てとの両立です。「介護のために仕事を辞めなければ」と感じている方もいるかもしれませんが、介護離職は経済的に非常に大きなリスクです。まず使える制度を確認してください。

介護休暇・介護休業を活用する

知っておきたい2つの制度
  • 介護休暇(短期):年5日(対象家族が2人以上なら10日)。1日・半日単位で取得可。有給休暇とは別枠。病院の付き添いや手続きに使える。
  • 介護休業(長期):通算93日まで取得可能。3回に分割して使える。雇用保険から休業給付金(給与の約67%)が支給される。
  • まずは上司・人事に「親が入院した」と早めに伝えることが大切。知らないうちに有給を使い切るより、制度を活用した方が長続きできる。

特に在宅介護が始まると、日常的なサポートの確保が課題になります。ヘルパーやデイサービスだけでは補えない時間帯(夜間の見守り・急な外出付き添い・家族の体調不良時など)は、介護保険の適用外となる柔軟なサービスを組み合わせると負担が大きく減ります。

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まとめ:フェーズ別にやること

  1. 入院直後48時間:主治医から状況確認/MSWに声をかける/家族に連絡・情報共有
  2. 入院中1〜2週間:介護認定の申請/家族で役割・費用分担を話し合う/仕事の段取りを整える
  3. 退院2週間前:MSWと退院後のプランを検討/ケアマネ契約・ケアプラン作成/訪問介護・デイサービスを退院前に手配
  4. 迷ったら「地域包括支援センター」か「病院のMSW」に相談。どちらも無料で対応してくれる
  5. 介護離職はしない。介護休暇(年5日)・介護休業(93日)制度を活用する
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参考・出典
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。要介護認定の手続きや各制度の利用条件は自治体によって異なる場合があります。具体的な手続きは地域包括支援センターまたは市区町村窓口にご確認ください。