突然の介護開始でパニックになるのは当然
「昨日まで元気だったのに」「こんなに早く来るとは思っていなかった」。親が脳梗塞や脳出血、骨折などで突然入院し、そのまま介護が始まる――日本では毎年こうした形で介護が始まるケースが多くあります。
突然の出来事に動揺するのは当たり前です。ただ、パニックのまま動き回ると判断を誤り、後から後悔する選択をしてしまいがちです。「今すぐすべてを決めなくてよい」ことをまず知っておいてください。この記事では、入院直後・入院中・退院前の3つのフェーズに分けて、やるべきことを整理します。
仕事中に母から電話があって「お父さんが倒れた」って。頭が真っ白になりました。会社を早退して病院に向かいながら、「仕事はどうする」「子どものお迎えは」「介護って何をすればいいの」って頭の中がぐるぐるして。病院に着いても、先生の説明が半分も頭に入ってこなかった。あの日、自分が何をしていたかほとんど覚えていません。後から聞いたら、入院した日のうちにやっておけることがいくつもあったと知って、後悔しました。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
フェーズ1|入院直後の48時間でやること
入院直後は情報収集が最優先です。この時点では「退院後をどうするか」を決める必要はありません。まず状況を正確に把握することに集中してください。
フェーズ2|入院中にやること(1〜2週間)
入院期間中は「退院後の生活を準備する期間」です。特に介護認定の申請は時間がかかるため、この期間中に動き始めることが重要です。
① 介護保険の要介護認定を申請する
介護保険サービスを使うには要介護認定が必要です。申請から結果が出るまで原則30日かかるため、入院中に申請を始めることで退院後すぐにサービスを利用できます。
認定結果が出る前でも、ケアマネジャーに依頼して「暫定ケアプラン」を作ることで、訪問介護・デイサービスなどを先行して使い始められます。退院日が認定結果より早くなりそうな場合は、MSWかケアマネに相談してください。
② 家族で役割・費用分担を話し合う
入院中の落ち着いた状況で、兄弟や家族と話し合いを持ちましょう。退院後に慌てて決めると感情的になりやすく、後になって「言った・言わない」のトラブルになりがちです。
- 主な介護の担当者は誰にするか(一人に集中させない)
- 費用は誰がどのくらい負担するか(年金・貯蓄・兄弟分担)
- 退院後は在宅介護か施設入居か、大まかな方向性
- 遠方に住む兄弟の関わり方(週末に来る・費用を出すなど)
- 緊急時の連絡順番と対応担当
父が倒れた翌日、兄・弟・私の3人で病院に集まって話し合いました。「俺が費用を多く出す」「俺は週末に通う」「通院付き添いは私」って、その場で大まかに決めた。後から考えると、あの早い段階での話し合いが本当に大事でした。介護が始まってからだと、それぞれが疲弊していて感情的になりやすいし、役割が曖昧なまま進んでしまう。しんどくなってから話し合うのは遅いんです。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
フェーズ3|退院前にやること
退院日が決まったら、具体的な「退院後の生活」を組み立てる時期です。MSWやケアマネと連携しながら、退院当日から安心して生活できる体制を準備します。
入院中に病院のソーシャルワーカーさんに声をかけてもらったのが、本当に助かりました。「介護認定の申請、入院中にできますよ」「退院後のサービス、一緒に探しましょうか」って言ってくれて。自分では何が必要かもわからなかったのに、退院前には訪問介護とデイサービスが決まっていました。最初に頼るべきはMSWです。知らなかったら「退院後に何もない状態」で帰宅することになっていたと思います。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
相談先別「誰に何を相談する?」
介護が始まると、さまざまな相談先が出てきます。どこに何を聞けばよいかを事前に整理しておくと、いざというときに迷いません。
| 相談先 | いつ使う | できること | 費用 |
|---|---|---|---|
| 病院のMSW (医療ソーシャルワーカー) |
入院中〜退院前 | 退院後のプラン相談・施設紹介・在宅サービスの調整・認定申請の案内 | 無料 |
| 地域包括支援センター | 退院前後・介護全般 | 介護全般の総合相談・認定申請の代行・ケアマネの紹介・介護予防 | 無料 |
| ケアマネジャー | 認定後〜継続的に | ケアプランの作成・サービス事業所の調整・定期モニタリング・各種手続き | 無料(介護保険適用) |
| 市区町村窓口 | 認定申請時 | 要介護認定の申請・介護保険証の発行・負担軽減制度の案内 | 無料 |
「まだ認定を受けていない」「何から始めればいいかわからない」という状態でも大丈夫です。地域包括支援センターはどんな相談も受け付けており、必要な窓口につないでくれます。市区町村のホームページや電話帳で「地域包括支援センター」と調べると見つかります。
仕事・育児との両立をどうするか
突然の介護開始で最も頭を悩ませるのが、仕事や子育てとの両立です。「介護のために仕事を辞めなければ」と感じている方もいるかもしれませんが、介護離職は経済的に非常に大きなリスクです。まず使える制度を確認してください。
介護休暇・介護休業を活用する
- 介護休暇(短期):年5日(対象家族が2人以上なら10日)。1日・半日単位で取得可。有給休暇とは別枠。病院の付き添いや手続きに使える。
- 介護休業(長期):通算93日まで取得可能。3回に分割して使える。雇用保険から休業給付金(給与の約67%)が支給される。
- まずは上司・人事に「親が入院した」と早めに伝えることが大切。知らないうちに有給を使い切るより、制度を活用した方が長続きできる。
特に在宅介護が始まると、日常的なサポートの確保が課題になります。ヘルパーやデイサービスだけでは補えない時間帯(夜間の見守り・急な外出付き添い・家族の体調不良時など)は、介護保険の適用外となる柔軟なサービスを組み合わせると負担が大きく減ります。
まとめ:フェーズ別にやること
- 入院直後48時間:主治医から状況確認/MSWに声をかける/家族に連絡・情報共有
- 入院中1〜2週間:介護認定の申請/家族で役割・費用分担を話し合う/仕事の段取りを整える
- 退院2週間前:MSWと退院後のプランを検討/ケアマネ契約・ケアプラン作成/訪問介護・デイサービスを退院前に手配
- 迷ったら「地域包括支援センター」か「病院のMSW」に相談。どちらも無料で対応してくれる
- 介護離職はしない。介護休暇(年5日)・介護休業(93日)制度を活用する
- 厚生労働省「介護保険の申請方法・手順」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「地域包括支援センターについて」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「介護休業・介護休暇制度」→ https://www.mhlw.go.jp/